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たとえば「N・タイムズ」の記者の取材に応じれば、たとえ競争国のフリー・ライターであっても、その取材にも応じなければならないという、機会均等と取材の自由の原則が生きていた。
情報は公平に公開するというのが、それこそNN総研社長がいった企業の〈社会的責任〉といえる。
まして、企業利益にかなうかどうかで、ライターや出版社まで選別すれば、アメリカでは逆に企業が世論の反撃を受けるだろう。
アメリカのジャーナリストのディビット・ハルバースタムが最近、発表した『覇者の騎り」(八七年、N放送出版協会刊)については、私も彼の日本での取材に協力したが、彼もなげいていた。
・最初の日本取材を終えたときには、「日本は情報保護主義国か」と厳しく日本人に問いかけている(『Aジャーナル」八三年九月一六日号)。
また、この著書のあとがきでも、どの著書の取材より日本での取材に苦労したとも卜を発表している。
日本と比べると、取材と報道の自由が格段に保障されている欧米先進国では、ジャーナリストも証券会社の不正取引には厳しくペンのメスを入れてきた。
彼らは日本の異常事態についても、いくつかのレポIらしている。
それらのレポートの翻訳で私を助けてくれた知人も、「アメリカのジャーナリズムの方が、ですね」といった。
残念ながら、それらも日本では国民の目にはふれないままになっている。
ポートのいくつかについては、必要によってところどころで紹介する。
意外に健全それらのしT節也会長は、内部情報の独占的活用であるインサイダー取引など、不正取引行為の監視についても、口では立派なことをいっている。
彼は、N証券が〈リーディングカンパニーとしての役目を果たさなければいけない。
それにはD(経営公開、企業情報開示)ですね〉(前出『N証券はいまこう考えている』)という。
だが、その報道管制の実態からは、N証券が情報操作で〈リーディングカンパニーとしての役目〉を果たしているとしかいいようがない。
しかも、その情報操作が、後述のように大規模な株価操作や不正取引行為につながっていく。
N証券は、マスコミ対策だけでなく、社員などの内部告発で不正取引行為などの秘密が暴露されないように、社内でも報道管制を明文化している。
就業規則第二条は、〈会社の認可を受けないで〉は、〈業務に関する事項について、自己の名で刊行物を発行し、もしくは新聞雑誌に投稿し、または講演をおこなうこと〉を禁じている。
この就業規則自体も、社員コードと氏名を入れて配布され、〈社外秘〉の判が押されている。
いうまでもないことだが、就業規則は、労働基準法で、その労働組合あるいは労働者の過半数を代表する者の意見を聞いて作成することが義務づけられ(九○条)、〈行政官庁に届け出なければならない〉(八九条)ものだ。
その意味で、会社側だけが秘匿するものではなく、公的で、公開されたものだ。
社内の秘密事項にはランクもつけられ、社内限、社外秘、厳秘、超厳秘の順で厳しくなる。
ミディと呼ぶ婦人証券貯蓄係の「ミディ必携」も、表紙に〈社内限〉の判が押してある。
こうして従業員の口も封じる異常な秘密主義による報道管制と情報操作とによって、N証券などの不正取引行為もまかりとおってN総研の調査に協力してだまされたN証券のセールスマンに、会社側に取材を拒否された話をすると、彼はいった。
「じゃあ、ジャーナリストも、われわれセールスマンと同じですね。
『セールスは断わられたところからはじまる」といいますからね。
だけど、N証券の場合は、冷蔵庫なんていらないアラスカへ行って、なにがなんでも冷蔵庫を売ってこいというやり方ですよ」取材拒否の顛末で明らかになったのは、N証券の情報提供がその業務といかに〈両輪の関係〉にあるかということだった。
だが、情報は提供するだけではなく、その業務に好都合な情報を収集しなければならない。
ことによっては、情報はつくられる。
アラスカでは必要のない冷蔵庫を売るには、ただ強引なセールスだけでは目的を果たせない。
相手が買う気になるように、無用なものも必要に思えるような情報をまきちらさなければならない。
詐欺師の口上と同じで、うまい話、つまり都合のよい情報を並べたてなければならない。
とはいえ、そんな情報はおいそれと転がっていない。
となれば、そんな情報をつくりあげるしかないということにもなっていく。
この情報収集の業務を分担しているのが、N総研だった。
むろん、すべてがつくられた情報とはいわない。
だが、実は、私自身が、N証券の取材に先立って、N総研の情報収集というよりは情報づくりに近い仕事を、偶然にも手伝わされる羽目になった。
八七年七月、東京都庁内にある「日米市長及び商工会議所会頭会議実行委員会事務局」の名で書類が郵送されてきた。
そのなかには、同実行委員会会長のS俊一都知事の名で「「都市を主役とする日米交流に関するアンケート」への参加のお願い」という、印刷された手紙が入っていた。
〈現在の日米関係における難しい局面の中で、新しい交流の担い手である都市の役割についてご意見を伺いたい〉という内容だ。
具体的には、〈N総合研究所に委託し、日米の有識者及び地方行政担当者の方々を対象に実施〉するというアンケート調査に、〈協力〉してほしいということだった。
また、N総研常務取締役・鎌倉研究本部長のM東一郎の名で印刷された手紙も同封されており、〈問い合わせ先〉として、直接担当するN総研地域開発研究部の担当者の名が並べられていた。
地域開発研究部は、〈環境計画、地域計画、都市開発、都市経営の四研究室を設け、政府機関、地方自治体および民間企業に対して、都市や地域にかかわる多様な調査研究サービスを実施している〉(同社「会社概要」)という。
政府、自治体から請け負った調査研究によってえられる情報も、当然、N証券とそのグループの業務に生かされている。
たとえば、さきのK広報室次長は、名刺から私が千葉県Y市内に住んでることを知り、「Y市にはうちのN不動産の造成地があるでしょう、随分、値上がりしているようですよ」といっていた。
この土地は、数年後に実現する地下鉄東西線延長の新駅建設予定地のそばにある。
この土地なども、さしづめ地下鉄延長の計画案の段階からかかわった情報をもとに、新駅周辺の土地を買い占め造成したものだろう。
そうでなければ、いくら〈不可能は辞書にないから〉という新社歌をうたってみても、これほどタイミングよく自分のものにするのは不可能だ。
送付されてきたアンケートは、B4判で一二ぺージにわたるものだった。
担当の地域開発研究部に「ギャはいくらか」と聞くと、ダダということだった。
一つにはN総研がどういう仕事をするのか確かめ回答者は二二○人で、〈米国に旅行、あるいは滞在した〉経験の有無の集計を見ると、〈ある〉が八三・四%も占めていた。
また、別項の設問で、〈米国と関わりのある仕事をしたことがない〉という回答は、一五・六%にすぎず、あとはすべて現在か過去に〈米国と関わりのある〉という回答になっていた。
二回目のアンケートとともに送られてきた一回目の「集計結果表」に、私の意見がどの程度、集計され反映されているか興味があった。
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